手書きの出勤簿はNG?「客観的な労働時間把握」の義務化と中小企業の具体策
社会保険労務士法人シャイン
代表社員の中村仁です。
梅雨がそろそろ明けるとのことですが、蒸し暑い日が続き、
体力的には結構しんどい状況です。
夏場の労働時間に関しても色々な議論が出ていますが、
今回は、そもそもの労働時間の管理についての確認です。
【「客観的な労働時間把握」の義務化と中小企業の具体策】
「うちは昔から、社員に毎月末に手書きで出勤簿を提出させている」
「タイムカードを導入するほどの規模でもないし、手書きで十分まわっている」
このように、手書きの出勤簿や、各自がエクセルに入力するスタイルで
労働時間を管理している中小企業は少なくありません。
しかし、結論的には現在の労働法において、明確な理由のない
「手書きの出勤簿」による管理は、事実上の『NG(法違反のリスク大)』
とみなされる可能性が非常に高くなっています。
なぜ手書きではダメなのか、法律が求める「客観的な把握」の基準と、
中小企業が今すぐ取り組むべき具体策を解説します。
1. 法律が求める「客観的な労働時間把握」とは?
労働安全衛生法の改正により、すべての企業において
「客観的な方法による労働時間の把握」が義務付けられています。
厚生労働省のガイドラインでは、会社が労働時間を把握する方法として、
原則として以下のいずれかでなければならないと定めています。
①使用者(会社)が、自ら現認して(目で見て)確認し、記録する
②タイムカード、ICカード、パソコンのログ等の客観的な記録を基礎
として確認し、記録する
見ての通り、ここに「社員による手書きの記録」は含まれていません。
手書きの出勤簿は、法律上は客観的な記録ではなく、単なる「自己申告」
として扱われます。
《自己申告が認められる例外とは?》
ガイドラインでは、自己申告制の導入が認められるのは「事業者の現認による
把握が可能」などに相当に限定されています。
オフィスに出社しているにもかかわらず、手書きで済ませている状態は、
法律の原則から外れていると判断されてしまいます。
2. 手書き出勤簿が会社にもたらす「致命的なリスク」
手書きの出勤簿を使い続けることは、経営者にとって「大きいリスク」を
抱えてビジネスをしているようなものです。
具体的には以下の3つのリスクがあります。
① 毎日「9:00〜18:00」のワンパターン記録は疑われる
手書きの出勤簿でよくあるのが、毎日寸分違わず「9:00〜18:00」と
綺麗に書かれているケースです。
労働基準監督署(労基署)の調査が入った際、このような出勤簿は
「実態を反映していない形骸化したもの」と見抜かれます。
結果として、管理怠慢を指摘され、是正勧告の対象となり得ます。
② 退職後の「未払い残業代請求」のリスク
もしも退職した社員から「手書きの出勤簿には18:00退勤と
書かされていたが、実際には毎日21:00までサービス残業をしていた」
と訴えられたらどうなるでしょうか。
社員側が「21:00にパソコンをシャットダウンしたログ」や
「家族への『今から帰る』というLINEの送信履歴」を証拠と
して提出した場合、裁判所や労基署は手書きの出勤簿ではなく、
パソコンのログやLINEの履歴を「労働時間」と判断する場合があります。
仮に全てが労働時間と判断されると、会社は言い逃れができず、
過去3年分の未払い残業代を一挙に請求されることになります。
③ 不正打刻や人間関係のギスギスに繋がる
手書きの運用は、遅刻の改ざんや、残業時間のサバ読み
(多く書いて出すなど)が簡単にできてしまいます。
これらを防ぐために上司が細かくチェックしようとすると、
「疑われているのか」と社員との関係が悪化する原因にもなります。
3. 中小企業が明日からできる「脱・手書き」の具体策
現状は客観的な打刻がないと、法的には相当不安定な状態です。
最近、手書きからステップアップする企業のほとんどが選んでいるのが
「クラウド勤怠管理システム」です。
「うちのような規模では贅沢だ」と思われるかもしれませんが、
手書きの出勤簿を毎月回収し、電卓で労働時間を集計して給与計算ソフトに
手入力する「経営者や経理担当者の人件費(時間)」を考えてみてください。

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【「自己申告」から「自動記録」へ】
「手書きの出勤簿」は、昭和から平成初期にかけては当たり前のものでした。
しかし、令和の今、それは会社を守るどころか、大きな経営リスクを呼び込む
原因になってしまっています。
労働時間を客観的に正しく把握することは、従業員の健康を守るためだけでなく、
「いわれのない残業代請求から、経営者自身と会社を守る」ための最大の防衛策です。
「うちの規模なら、どのシステムが一番安くて使いやすい?」
「就業規則の変更もセットで進めたいけれど、何から手をつければいい?」
そんな疑問や不安がございましたら、ぜひ一度当事務所までお気軽にご相談ください。
御社の規模と予算に合わせた、最適な労働時間管理のステップをご提案いたします。
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★編集後記
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最近、かなり手書きの勤怠管理は減りましたが、
それでも補助的に日報を使ったりというケースは
少なくないように思います。
少なくとも「客観的な労働時間の記録」がない状態は、
労務管理上は、相当リスクが高い状態となりますので、
見直しが必要であればお気軽にご相談ください。
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