「年収の壁」問題への対応について!

社会保険労務士法人シャイン
代表社員の中村仁です。

皆さんも同様かと思いますが、9月の下旬に
急に出てきた「年収の壁、解消問題」。

社労士業界内でも色々と話は出ていますが、
実務的なレベルでの所感を触れていきたいと思います。

【「年収の壁」問題とは?】
厚生労働省 年収の壁・支援強化パッケージ
https://www.mhlw.go.jp/stf/taiou_001_00002.html

厚生労働省 第7回社会保障審議会年金部会
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/nenkin_230921.html

今般の「業務改善助成金」もそうですが、
年度途中に割と大き目な変更をかけてくるのが、
今の政府のやり方という感じがしています。

朝令暮改といいますが、早くやってくれた方が、
確かに良いこともありますが、現場サイドの事を考えると、
もう少し段取りし欲しいという話ではありますが。

さて、「年収の壁」問題について、
少し実務的に確認してみます。

よく言う「年収の壁」については下表のように整理できます。

今回大きく話題になっているのが社会保険関係の扶養となる
「106万円」と「130万円」。
103万円と150万円もあるのですが、こちらは「税法上の扶養」。

同じ「扶養」という言葉を使っているのでややこしいのですが、
今回はあくまで「社会保険関係」の扶養の話をしている、
というところがまずポイントです。

106万円と130万円も、それぞれ、それなりにややこしいので、
分けて確認をしていきます。
国側で示している整理が下図となります。

【106万円の壁】
日本年金機構 短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大
https://www.nenkin.go.jp/service/pamphlet/kouseinenkin.files/jigyounushi_guidebook.pdf

これは一定より社員がいる会社(とごく一部の会社)の話で、
現状、多くの中小零細はまだ影響がないところと言えそうです。

現状の「一定」とは「社会保険に100人以上加入している会社」です。
社員数ではなく、「社会保険に加入している人数」がポイントです。

この規模の会社になると、週20時間以上働いた場合、
その労働者は月の基本給料が8.8万円を超えると
社会保険(厚生年金、健康保険)への加入が義務付けられます。

8.8万円×12カ月で106万円です。

社会保険に加入することで、本人にも保険料が発生するので、
結果的に「手取り額が減ってしまう」ということになります。
※どのくらい減るかなどは、また別の機会でご紹介できればします。

今示されている内容としては、106万円を超えて社会保険加入した
労働者に手取り額が減らないような手当などを会社が払った場合、
会社に対して、補助金を出すというイメージのようです。

簡単にいえば、、、
① 一定の労働・収入で社会保険加入⇒手取り減
② 会社が①で減る分を別途補助する
③ ②で補助したものを国が補助

国が会社を補助する手法としては「キャリアアップ助成金」
という制度を考えているようです。
※会社側の手続きの負担などは相当増えそうです。

【130万円の壁】
日本年金機構 従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が
家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/hihokensha1/20141202.html

こちらは「働き過ぎると、家族(基本配偶者)の扶養を外れてしまう」
という問題です。

年収が130万円未満であれば、配偶者の扶養として、
下記2点のメリットがあります。
① 各月の国民年金保険料の負担がなくなる(第3号被保険者)
② 医療保険料が発生しなくなる(保険証を配偶者の会社から発行など)

今、所得が増えると、家族の扶養から外れてしまう、
ということで、こちらの方が労働力的には影響が大きく、
最低賃金の上昇で更に深刻になってきました。

最低賃金が上がることで、元々働ける労働時間が少ないパートタイマーが、
より働けなくなるということです。

年収130万円を各月で考えると、約10.8万円。
山梨の最低賃金で考えると、下記の労働時間が上限になります。
令和5年9月まで 10.8万円÷898円=約120時間
令和5年10月から 10.8万円÷938円=約115時間

パートタイマーが多い会社で、1人当たり、月5時間減る、
というのは、相当大きな影響となります。

こちらへの対応として、当該パートタイマーを雇用している会社が、
130万円を超えて働かせても、繁忙期対応だったというような
証明を出すことで、扶養から外さなくてよい、ということのようです。

こちらもパートタイマーを雇用している会社が証明を出す、
ということであれば、会社がきちんと対応しないと、
色々と制度上不具合が出そうな感じがしています。

、、、一応、上記のような制度が示されているので、
今週以降、どのようになっていくのか、というところを
少し注視していきたいと思います。

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★編集後記
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仕方ないのか、制度の考え方なのか、
会社の事務負担がどんどん増えている中で、
今回もその負荷がまた増えるようなイメージです。

混乱なく、色々なことが進むことを祈りつつ、
出来るだけ負担が減ってほしいというのが、
実務者として正直に感じるところです。

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