令和7年度の最低賃金の見通しは?
社会保険労務士法人シャイン
代表社員の中村仁です。
毎年チャレンジしている富士登山に
今年も行ってきました。
今年は入山制限が非常に厳しくなり、
登山する人そもそもが減った印象で、
そのお陰か、スムーズに登れた感じがします。
ただ、入山料を始め、色々なサービスも高騰し、
登りたくても登れない、という人も増えそう。
これからは登山に限らず、「お金を出せないと、
そもそもサービスを受けられない」ということが、
増えていきそうな懸念を感じました。
【令和7年度の最低賃金改定は?】
今年もまた、最低賃金の改定に関する議論が
本格化する季節がやってまいりました。
物価上昇や人手不足が続くなか、
「令和7年度の上げ幅は一体どうなるのか」
「これ以上の人件費負担増にどう対応すれば…」
といった不安や疑問をお持ちではないでしょうか。
結論から申し上げると、
「令和7年度も大幅な最低賃金引き上げ」
となる可能性が極めて高いと予測されます。
8月1日、厚生労働省の中央最低賃金審議会において、
「全国平均で6%(63円)前後の目安を示す方向」
で調整に入ったようです。
令和6年度の改定では、全国加重平均で過去最高の51円増となる
1,055円となり、ついに1,000円の大台を大きく超えました。
この流れは、令和7年度も続くと見るべきでしょう。
中央最低賃金審議会では、例年、労働者側と使用者側、
そして公益を代表する委員によって議論が交わされます。
令和7年度の議論における主な論点は以下の通りです。
引き上げ要因(労働者側・公益委員の主張)
持続的な物価上昇:
食料品やエネルギー価格の高止まりが続いており、
労働者の生活を守るために賃上げは必須との考え。
高い水準の春闘賃上げ:
大企業を中心に高い賃上げ率が実現しており、
その波及効果が期待される。
深刻化する人手不足:
賃金水準を上げなければ、人材の確保・定着が
困難であるという現実。
抑制要因(使用者側の主張)
中小企業の支払い能力の限界:
原材料費や光熱費の高騰に加え、人件費のさらなる増加は、
企業の存続そのものを脅かしかねないという懸念。
価格転嫁の難しさ:
コスト上昇分を製品やサービスの価格に
十分に転嫁できていない企業が多い実情。
これらの論点を踏まえると、
引き上げ額の着地点を見出す交渉は
難航も予想されますが、
政府が掲げる「全国加重平均1,500円」という
目標も視野に入っており、
引き上げの流れを止めることは難しい状況です。
経営者としては、「引き上げは起こるもの」として、
早期に対策を講じることが賢明です。
【人件費増だけではない。中小企業が直面する課題】
例えば、時給1,100円のパート従業員が
20名在籍する企業で、最低賃金が
50円引き上げられた場合を考えてみましょう。
50円 × 20名 × 1日8時間 × 月20日 = 月額16万円`
年間では約192万円`
の人件費が純増します。
これに加え、社会保険料の負担も増加します。
この直接的なコスト増以上に、
以下のような課題にも目を向ける必要があります。
採用競争の激化:
周辺地域の最低賃金が底上げされることで、
これまでの賃金では人材が集まりにくくなります。
既存社員の不公平感:
パート・アルバイトの時給が上がることにより、
長年勤務している正社員との給与バランスが崩れ、
モチベーション低下を招く恐れがあります。
収益構造の圧迫:
価格転嫁が進まなければ、人件費増が
そのまま利益を圧迫し、新たな設備投資や
事業展開の足かせとなります。
【最賃アップを乗り切る為に】
最低賃金引き上げを乗り切るには3つの対策が重要です。
IT化や業務改善で生産性を高め(守り)、
付加価値向上と価格転嫁で収益力を強化し(攻め)、
賃上げを支援する業務改善助成金など公的制度を賢く活用しましょう。
【まとめ:ピンチをチャンスに変える経営を】
令和7年度の最低賃金引き上げは、
多くの中小企業にとって厳しい経営判断を
迫るものとなるでしょう。
しかし、これを単なるコスト増と捉えるのではなく、
「業務の無駄をなくし、自社の提供価値を見直し、
強い経営体質へと転換する絶好の機会」と
捉えることもできます。
審議会の結論を待つのではなく、
今この瞬間から情報収集と対策を始めることが、
未来の安定経営への第一歩となります。
まずは自社の現状を分析し、
小さな一歩からでも改善に
着手してみてはいかがでしょうか。
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★編集後記
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このところ、最低賃金が予想を上回る上げ幅で
推移しており、今年度もその流れになりそうです。
悲鳴に近い経営者の声が現場では出ているので、
賃上げ+景気対策などの根本的な対策の実施を
合わせて臨みたいところです。
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