「試用期間」の運用は要注意!

社会保険労務士法人シャイン
代表社員の中村仁です。

この週末は社労士会関係で、全国規模の大会に参加しました。

不思議なもので、コロナで人の行き来が制限されたがために、
web会議などでかえって遠くの方と接点を持つことが増え、
今回も初めてお会いするのに、初めてな感じがしない方が多かったです。

今、AIなどデジタル技術の活用で変化が生じていますが、
その時々で生じている変化をうまく活用することで、
今いる状況も随分変わるものだと実感しました。

【試用期間とは?】
厚生労働省 試用期間中の解雇
https://www.mhlw.go.jp/churoi/assen/dl/jirei09.pdf

「試用期間」という言葉を御存じでしょうか?
法的には下記のように解釈されています。

(1)通常の試用期間中の契約関係に関しては、解約権留保付の労働契約が
 すでに成立していると解されている(三菱樹脂事件―最大判昭48・12・12)。
(2)試用期間中の解約権の行使に関しては、通常の解雇より広い範囲における
 解雇の自由が認められるが、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当と
 是認されるものでなくてはならない。
(3)採用当初知ることができなかったような事実が試用期間中に判明し、
 その者を引き続き雇用しておくのが適当でないと判断することに客観的
 合理性が認められるような場合に、解約権行使が相当であるとされる。

これだけ読むととても難しいですが、少しわかりやすく表現すると
「労働契約は始まっているものの、色々理由があれば解約(解雇等)を
 認められやすい期間」という感じになるかと思います。

つまり「試用期間中だから、なんでもかんでもやめさせられるわけではない」
という理解でよいかと考えます。

【「試用期間」の運用は要注意!】
お客様からの質問でも「試用期間ってなに?」はかなり多い部類で、
実務的にも、試用期間に関する対応は少なくありません。

働きだした社員が能力などを理由に、働いてもらうのが難しい、
というケースなどです。

もちろんケースごとで対応は異なりますが、実務的には
まず本人に「試用期間」が伝わっているかが、重要だと考えます。

多くの中小企業は「労働条件通知」など、書面での明示をしておらず、
「うちは試用期間3カ月だから」など、なんとなく決めていても、
それが伝わっていないでトラブルになることも十分にあり得ます。

また上記のとおり「試用期間中だから自由にやめさせられる」という、
勘違いもかなり多くあると考えられます。

実際、能力的に仕事を続けてもらうのが難しい、というケースでも、
会社が試用期間中に十分に指導・教育をしたり、
その経緯を書面で残したりすることは最低限必要です。

【「試用期間」は有期雇用ではない】
また「試用期間と有期雇用」の理解が混じっているケースも多いです。

たとえば、試用期間を3カ月とした場合に、3カ月のところで会社が、
本作用するか否か(退職)を自由に判断できるでしょうか?

こちらも「試用期間は長期雇用を前提としている最初の見極め期間」
となる為、自動的に労働契約終わったりすることはありません。

この点、もしも3カ月後にある程度契約を終了する可能性があるのであれば、
「有期雇用契約」で3カ月間の契約とする方が実務上はよいように考えます。

ただし、有期雇用契約としている場合、正社員としての契約かは疑問が残る為、
当該会社の制度による部分はあるとしても、一旦、
有期のパートタイマーなどの契約とするのが正しいように考えられます。

最近、キャリアアップ助成金などの影響で「6カ月の試用期間は有期契約」
などとする契約もあるようですが、実務上はトラブルになりうる可能性がある為、
この点は雇用契約上、しっかりとした整理が必要になると考えます。

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★編集後記
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人手不足時代の中、明らかに求人においては、
労働者有利な状況が続いていると考えられます。

試用期間も実務上はとても重要な制度となるので、
ルールをしっかりと決めた上で、運用もそれに沿って
行うことが大切です。

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